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快食案内サーチ
ゴルフ場の「戸山カントリークラブ」手前にある店だ。ただし、看板すら出ていないのでよほど気を付けていないと見過ごすだろう。左手に趣のある建物が見えたら、車を止めて覗いてみよう。そこが目指す店だ。伝統的な日本建築の技法と、西洋のスタイルが巧く融合した店で、入口では靴を脱ぎ、スリッパを履いて入店する。提供しているのはストレートとブレンドのコーヒーのみ。紅茶も、その他のソフトドリンクも、ケーキ類もない。コーヒーに一口サイズのケーキが添えられるのみだ。淹れ方はペーパードリップで、注文を受けて豆を挽き、丁寧に淹れる。一度に複数のコーヒーを淹れたりしないので、大勢で訪れたときは、同じ種類のコーヒーを注文しないと、非常に時間がかかってしまうから注意しよう。色々飲んでみたが、僕が最もこの店の良さが出ているなと思うのはペルー。淹れ方も良いが、特筆すべきはこの地の水の良さで、その水との相性が最も良く出てくるのだ。その味は水の味を感じるほどにさらりとしてクリア。何の抵抗もなく咽喉に滑り落ちて行き、舌にはすっきりした苦味とほの甘い味わいを残す。口に残る酸味やエグ味はほとんどなく「あー、雑味のないコーヒーってこういうものを指すんだ」と思うほど。ただし、カフェインの抽出が強くなるのがこの水の特徴なのか、胃弱な人は負担になるかもしれない。そしてコーヒーを淹れる店主の一挙手一投足も、職人的で清々しい。大袈裟に格好をつけてやっているのではなく、とにかく旨いコーヒーを淹れたいという一心なのだと、見ていて伝わってくる。店主は自動車とオーディオに造詣が深いらしく、店の奥に設置してあるステレオセットも自作のようだ。極めてデリケートなものなので、素人が不用意に触ることは絶対にNG。音楽を聞くと、二つあるスピーカーの一つからしか音が出ていないので、その理由を尋ねると「スピーカーを二つ使うと、特定の場所だけに良い音が出るのですが、一つだと音が店内をゆっくりと回ってくれるんです。店内のどの場所でも良い音が聞こえるようにそうしているのです」とのことだった。目の前の田圃に揺れる稲穂を眺めながらのんびりするのもよし、真っ暗な窓の外に浮かぶ月を眺めながら落ち着くのもよし、それぞれの季節、時間で様々な楽しみ方ができるだろう。ただし、とても静謐な店だし、客もそれを求めて来ているので、わいわい騒いだり、子供を騒がせたりするのは避けるべきだと思う。店主は「構いませんよ」と言うかもしれないが、わざわざここまで癒しを求めてやってきた他の客に対して失礼になってしまう可能性があるからだ。僕はコーヒー単体というよりも、この店の建物や自然環境を全て含めて高く評価したい。マニアックにコーヒーと向き合うのも楽しいし、心が武装解除されるような飲み方もまた楽しい。随分以前から、店の入口横に焙煎室が建てられつつあり、先日訪れたら完成に近づいていた。もうすぐですね、と訊くと「来月くらいにはできそうです」とのことだった。現在は広島市の「カフェ・サボイア」の豆を使っているそうだが、将来的には全て自家焙煎に切り替わるのだろう。そうなればそうなったでまた楽しみ。ちょっと郊外へ出かけた帰りにふらりと寄るのが楽しみになるような店なのだ。(02.09)
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