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快食案内サーチ
土橋の裏通りにひっそりとある完全予約制の店である。料理は基本的にお任せで、予約は4名以上からで受け付ける。そう聞くと、頑固親父がやっている敷居の高い店を連想してしまうが、まったくそんなことはない。丁寧で、親切で、家庭的なサービス陣と、料理毎に説明してくださる朗らかな厨師が、万全の体制で客を受け入れてくださるのだ。一組4名以上というのも、一度にある程度の量を作ったほうがより良いものができるからなのだろう。元々は上海の方に料理を習われたそうだが、現在では上海のみならず、中国各地の料理を提供しておられる。僕たちが食べたときには、伝統的な四川料理から、新しいタイプの広東料理まで様々な料理が出てきた。味の傾向としては、洗練されて上品よりも、勢いがあってがつんとくるタイプ。同じ星4つを付けた「竹琳」とは異なるスタイルだ。僕はどちらが好きかと言われると、こちらかもしれない。なお、この店のスペシャリテに「三不粘(サンプーチィアン)」というデザートがある。正確にはこの店オリジナルではなく、北京の宮廷菓子として伝えられてきた、歴史のある菓子だ。材料は卵黄、砂糖、ラード、澱粉のみで作られるが、製法がやたら難しい。中国人でも食べたことのある人はごく少なく、日本でこれを出す店は、おそらく10店もないのではないかと思う。見た目は卵黄の黄色が美しいつきたての餅のようで、ぷりぷりフワフワ。求肥と餅の触感を併せ持つような不思議な口内快感があり、2〜3回咀嚼すると、するすると咽の奥に落ちていく。ラードが使ってあるからといって、重たさは一切感じない。味的にはカスタードクリームに近いものだ。不思議な名前の由来は「皿につかず、箸につかず、歯につかない」ので、すなわち「三不粘」。見た目とは裏腹に、その名のとおり、どこにもくっつかない。尋ねてみると最後にはほとんどの場合、この菓子がでるそうなので、それまでにどれだけ旨い料理が出ても、一口分の余裕は空けておこう。そう、僕たちは5,000円のコースを頼んだが、最後は動くのがつらいほどに腹一杯になった。デザートの前に中国の和え麺スタイルの冷麺(冷やし中華にあらず)が出たのだが、さすがに少しだけ残してしまった。最後は皆、口々に「あれを残したのが心残りだ」というほどに旨かったのだが・・・。どうやら材料の価格がそのままコースの価格に反映されるらしく、より高いコースではより単価の高い素材を使われるようだ。ボリューム的には5,000円でも充分に満足できる。これだけ良い店に注文をつけるのは、ほとんど言いがかりに近いようにも感じるが、より良くなるための提案として書くとするならば、まず、コースの中にスープがなかったのはやや疑問。中国ではコースに必ずスープが入るのだが、ここでは提供されなかった。あるいは、ビールを主体にする日本ではあまり好まれないからかもしれないが、残念だった。一人で作られている限界なのだろうが、味の傾向がやや狭いように感じた。より拡がりのある、現在の丁寧さに驚きを兼ね備えた料理を出されると、僕たちはもう感嘆の声をあげるしかなくなるだろう。しかし、先に述べたように、これらはほとんど無い物ねだりの言い分に近い。もし、あなたが中国料理が好きならば「恵比須軒」の名を忘れてはならない。何としてでも4名かき集め、一度は行ってみるべき店である。(01.07)
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